覚えているのは、見慣れない雪景色の真ん中で意識が戻ったことだけだ。それがどこだったのか、どうやってそこに辿り着いたのか、思い出せない。自分の名前さえ思い出せない。記憶が蘇ってこなかった。 途方に暮れ、どうしたらいいのか考える時間はほんの一瞬しかなかった。しかし、雪と氷の中から巨大な昆虫のような怪物が飛び出し、襲い掛かってきた。運命は私の苦しみをさらに深めようとしているようだった。 当然、私は必死に逃げた。いずれにせよ、怪物は私を追い詰めた。 その時、どこからともなく現れた、美しく謎めいた少女が。私の命を救ってくれた。 彼女はクオンと名乗った。美しく謎めいた少女だった… …獣のような尻尾と耳を持っていた。